変な夢
投稿者ユリ子さん
2003年05月25日 13:05:00
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イノセント ワールド (続編A)
クジラの半身が見えてくるに連れて、正面の細工してある鉄の門が開く。その門の向こうに指揮をとる人間がいた。 押し込まれながら尾びれが靡く。体は揺れる。酸素の海に晒されて、泣きながら嫌がっているように思えた。 クジラはもう喋らなかった。どうしてだろうと思った。水から上がった私に、クジラの声はもう聞こえないのだろう。 レンガの壁に響く振動が全身を鈍く駆け抜ける。この場所は夢の中で見覚えのあるところだった。故に考えたらゾッとした。 私のいる壁とは反対側にある、細く細工してある錆びかけの門が開き、その向こうの深い谷間に落下したものを、泉に続く水の張ってある谷底で真っ二つに切り裂く刃を閉まってある網状の門が開く音が聞こえた。 人間たちは合図を送り合い、壁と壁の隙間から出てきたクジラをゆっくりと処刑の門に誘導していく。なんて残酷な光景だろうと思う。 そしてクジラの体は、頭からゆっくりと落ちていった。瞬間、血飛沫を想像した。
谷底の水の波がザバッと返ってきた。跳ね返る水の色が血に染まってセピアに色づく。瞬間、次の瞬間、と写真を撮っているように感じられた。とても古い写真機で、何枚も連続で記録する。 大きなクジラが泳いでいた水の中の景色を思い出す。過去に記憶された光景と共に、セピア色に変化した。
濁った水が、私のいる場所からでも見える泉に流れていく。それがやけに遠く感じた。
思い出す。 色づいた水を、流れ行く水を、記憶に焼き付けてセピアに染めて。
ただ、思い出す。
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